下肢静脈瘤はふくらはぎを中心とした足に静脈瘤ができる病気です。静脈瘤とは静脈がコブ(瘤)のようにふくらんだ状態をいいます。下肢静脈瘤は良性の病気ですが、足のだるさやむくみなどの症状が慢性的に起こり、生活の質(QOL)を低下させます。下肢静脈瘤は、40歳以上の女性に多く認められ、年齢とともに増加していきます。60歳前後をピークに、その後はあまり悪化しないと言われています。

下肢静脈瘤にはいくつかのタイプがありますが、静脈瘤がボコボコと大きい伏在型静脈瘤は、表在静脈のなかで最も太い伏在静脈の弁不全によって起きます。大伏在静脈瘤と小伏在静脈瘤の2種類があります。伏在静脈瘤はボコボコと大きい静脈瘤が目立ったり、足のだるさやむくみなどの症状が起こり、重症化して手術が必要になることもあります。大伏在静脈瘤は最も多いタイプで、足のつけ根の静脈弁が壊れて起こり、膝の内側に静脈瘤が目立ちます。小伏在静脈瘤は比較的少なく、膝の後ろ側の静脈弁が壊れて起こり、ふくらはぎに静脈瘤が目立ちます。

重症化すると湿疹や脂肪皮膚硬化症などの「うっ滞性皮膚炎」を合併します。さらに悪化すると潰瘍になる可能性もあります。

原因

下肢静脈瘤は女性に多く、歳を重ねるほど増えていきます。静脈瘤がボコボコと大きい伏在型静脈瘤は、表在静脈で最も太い伏在静脈の弁不全が原因です。遺伝性があり、両親とも下肢静脈瘤の場合には将来的にはその子供も90%発症するというデータもあります。また、妊娠時にはホルモンの影響により静脈が柔らかくなって弁が壊れやすくなるため発症しやすくなります。

立ち仕事、特に1ヶ所に立ってあまり動かない調理師、美容師、販売員などは発症しやすいとされています。特に1日10時間以上立っている人は重症化しやすい傾向にあります。また、肥満や便秘なども下肢静脈瘤を悪化させる因子です。

アーユルヴェーダの見方

下肢静脈瘤は、ヴァータのサブドーシャであるヴィヤーナヴァータのアンバランスによって起きる病気です。全身を巡っているヴィヤーナヴァータが増悪すると血圧が高まり、静脈の弁の働きや柔軟性を損ないます。

ヴァータは乾燥性、動く、粗いという質を持っており、体のあらゆる動きをコントロールします。動脈や静脈を流れる血液の動きもヴァータが司っています。ヴィヤーナヴァータは、酸素を含んだ血液を心臓から動脈を経由して各細胞に運ぶ働きをしています。また、酸素がなくなった血液を各細胞から静脈を経由して心臓に戻す働きもしています。血液を心臓に戻すとき、静脈の動きは周辺の筋肉や一方向にしか開かない弁に依存しています。血液が静脈を流れるとき、カップ状の弁が開いて血液を通し、それが閉じて血液の逆流を防ぎます。ところがヴィヤーナヴァータがバランスを崩すと乾燥性が進み、弁と静脈を硬化させ弾力性を失わせます。同時に、血圧の上昇は静脈を拡張させるため、弁は正常に働かなくなり、筋肉は血液を心臓に押し戻すことができなくなります。一つの弁から次の弁に流れなくなった血液は、深部にある静脈より筋肉のサポートを得られにくい足の表在静脈に集まります。そのため皮膚の表面の下に静脈瘤ができるのです。

静脈瘤が悪化すると潰瘍化することがありますが、原因はランジャカピッタの増悪です。ピッタは熱くて鋭い質を持っており、代謝とホルモンの機能をコントロールしています。ピッタのサブドーシャであるランジャカピッタは血液をきれいに保つ働きをします。ランジャカピッタは肝臓と脾臓にあり、血液の組成と、血液を通して栄養素を細胞と組織に運ぶ役割を担っています。ランジャカピッタが増悪すると、食べ物の未消化物からできる毒素と血液が交じり合って血液は汚れ、ネバネバになって静脈瘤の潰瘍化を誘発します。

ヴィヤーナヴァータとランジャカピッタの増悪は消化不良から始まります。ライフスタイル、メンタルストレス、体質や季節に合わない食事などさまざまな要因がドーシャのバランスを崩します。ドーシャがバランスを崩すとすぐに消化力が落ち、食べた物がきちんと消化されなくなります。消化されない食べ物はやがて「アーマ」と呼ばれるネバネバした毒素になり、いろいろな病気の根本原因となります。

食べ物とライフスタイル

ヴァータとピッタのバランスをとる食事が大切です。ヴァータが増悪しやすい冬には、乾燥しやすく、落ち着きなく不規則に動くヴァータを鎮める食事を心がけましょう。そのためには加熱し、温かく、油分のある食事にすべきです。油分はギーやオリーブオイルがベストです。ヴァータとピッタのバランスをとる甘味の食品(穀物、軽い乳製品、甘い果物)を摂ります。さらにピッタを鎮めるために、豆類や緑黄色野菜など苦味と渋味の食べ物も副菜として食べます。

便秘を予防するために一日30グラムの食物繊維を摂りましょう。ベリー類、メロン、ぶどう、ざくろ、レモン、にんじん、かぼちゃ、さつまいも、冬瓜、葉物野菜、果物、バターミルク、全粒穀物、そば、レンティル豆、いんげんなどを十分に食べましょう。

ヴァータを鎮めるためには日課を決まった時間に行うことが大切です。血行をよくし、ヴィヤーナヴァータを落ち着かせるためにはオイルマッサージが効果的です。静脈瘤の患部には圧力をかけず、軽くさするようにマッサージします。オイルマッサージは毒素を排泄し、消化力を改善する働きをします。ヨガなどの運動を毎日行いましょう。